遠く離れて暮らす親戚同士(計4人)が、共有名義になっている土地の持分を売買し、1人に一本化するという案件のお手伝いをしたことがあります。
「共有状態を早く解消したい」との考えは一致していたので、手続きはスムーズに進むかと思いきや…。価格決めなどが難航し、5カ月かかりました。
共有者が複数いると、解釈はそれぞれ異なるからです。
今回は、不動産の共有名義のデメリットや、親子・夫婦・兄弟で共有した際の課題点について整理したいと思います。
共有名義のデメリットとは?
不動産が共有名義になる理由には、こんな例があります。
- マイホームを購入する子に、親が購入代金の一部を援助した
- 夫婦それぞれが住宅ローンを組み、マイホームの購入代金を出し合った(ペアローン)
- 亡くなった親から相続する際、子(兄弟姉妹)が法定相続分で共有にした
一般的に出資した金額の割合に応じて持分を決めて登記します。
親子や夫婦で共有名義にするメリットとしては、夫婦それぞれ住宅ローン控除を受けられたり、いつか売却する際にそれぞれ3,000円特別控除を利用できたりと、税制面での得があります。
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しかし、以下のような共有名義のデメリットも考えなければいけません。
- 売却するにも、建物を取り壊すにも、土地の用途を変えるにも、すべて共有者全員の同意が必要になる
- 相続発生によって共有者の人数が増えていく可能性がある
- 離婚によって売却を迫られる可能性もある
共有名義:親子の場合の課題
一人っ子で将来その子の所有物になるならいいですが、子が多い場合は、親が亡くなると法定相続人たちでその親の持ち分について分割協議をすることになります。
兄弟姉妹の仲が悪ければ、揉めごとに発展することも。解決策としては、親が遺言書にその持分を共有者に相続させる旨を書いておけば安心です。
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共有名義:夫婦の場合の課題
夫婦ペアローンで返済している途中で離婚することになり、片方がマイホームを出て行くといったケースです。1人のローンに組み合えようとしても、返済額が増えて難しいかもしれません。
相手の持分を買い取るにしても、その資金を用意できないケースも。
結局、売却処分する決断に至り、住み続けられないという話もよくあります。
共有名義:兄弟姉妹の場合の課題
親の相続時に揉めたため「とりあえず共有名義にした」という兄弟姉妹は注意が必要です。問題を将来に先延ばしにしているだけだからです。
例えば、3人兄弟で均等な持ち分(3分の1ずつ)で実家を長年共有していたとして…長男が亡くなってその子供たちが相続し、さらに次男も他界してその子供たちが相続し…となると、どんどん枝分かれしていきます。
冒頭の例のように、その不動産を動かそうにも所有者全員の意見をまとめるのが大変です。
管理は誰がするのか、固定資産税・都市計画税の支払いはどうするのか、単独名義にするならいくらで売買するのか…など、人数が多いと調整は難航するでしょう。
終わりに
共有名義は税制面でのメリットはあるものの、将来的にはどこかで解消するべきものだと思います。
特に“争族リスク”に繋がりそうな共有名義は、できるだけ早く対処した方がいいでしょう。
今や、100人に1人以上の割合で、遺産分割トラブルの案件が裁判所に持ち込まれているようですから…。
共有名義の不動産売買でお悩みでしたら、お声がけください。