大家が敷金返さないVS借主の原状回復が不十分…結末は?退去精算トラブル事例!

ある大家さんから「借主と敷金精算で揉めてるから相談に乗ってほしい」と連絡がありました。

私は「契約を仲介した不動産屋さんに相談してみては?」と提案しましたが、借主であるその相手が不動産業者とのことでした。

一般の借主と大家の敷金トラブルはよく耳にしますが、業者と大家というのは前代未聞…。詳しい話をヒアリングすることにしました。

3カ月に及んだ敷金精算をめぐるやり取りは、ほかの大家さんの参考にもなると思い、ここで概要を紹介することにします。

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退去・敷金トラブルの経緯

大家さんをAさん、業者をB社として、簡単に経緯をまとめます。

  • 物件は事業用テナントで、B社が事務所として使っていた
  • B社は、もともと新築当時からテナントに入っていた旧借主から契約を承継し、入れ替わりで使っていた(敷金も旧借主のものを承継)
  • 退去にあたっては、B社自らの手配で室内補修・クリーニングを行い、Aさんに返還する約束だった
  • B社の退去後、Aさんが室内を確認すると、床のPタイルの約3分の2が茶色く汚損した状態だった。また、テナント新築時に設備として設置したはずのエアコンが無くなっていた
  • Aさんは変色したPタイルの張り替えとエアコン返却を求めたが、B社はこれに応じず。B社は旧借主が預けていた敷金を返してほしいとAさんに要求した

Aさんの主張:原状回復が不十分であり、敷金は戻せない。補修費が足りないので、逆に請求したい

B社の主張:Pタイル変色は経年劣化・自然損耗にあたり、こちらが直す考えはない。エアコンは旧借主の所有物だったと聞いており、17年前の型式で老朽化していたため処分した

両者の意見は折り合わず、直接の対話もできないほど関係が悪化し、敷金精算がストップしました。

テナントの原状回復は居住用とは異なる

まずは原状回復についてどんな約束になっているか、賃貸借契約書を確認しました。

すると、年数の経過によって自然に汚れたり破損した部分は「貸主負担」で直し、それを超える部分は「借主負担」となっていました。

Pタイルの変色は自然の汚れなのか?がポイントです。

確認してみると、B社の営業時はPタイルの上にカーペットを貼って使っており、それを剥がした跡が茶色く変色していたことが判明。つまり、カーペットを貼らなければ生じなかった汚損と言えます。

Aさんはさらに、宅建協会にも写真を持って相談に行きました。「あくまで一般論として」という前提で、次のような話が聞けました。

  • テナント物件は、アパートなどの居住用とは異なり、国交相の原状回復ガイドラインの適用からは外れる
  • テナントは基本的に、借主が室内を全部直して返還する。特約があれば、それに従う
  • 例えば、コーヒーカップがあったとして、長年放置して汚れやヒビが生じれば「経年劣化」。カップを両手で強く持っていて汚れやヒビが生じれば、その人の「故意過失」

上記を踏まえ、AさんがあらためてPタイルの張り替えを求めたところ、B社は自己負担を了解してくれました。

エアコン処分は借主の勘違いだった

エアコンについては、新築時の図面に「設備」として記載がありました。

建築したハウスメーカーにも照会し、Aさんの所有物であることを確認。B社にその旨を伝えましたが納得してもらえず、今度は旧借主にも確認したところ「大家さんのエアコンに間違いない。B社への引き継ぎ時にそう伝えている」との証言を得ました。

B社の勘違いだったことがわかりました。

しかし、今度はエアコンの弁償方法について対立。Aさんは「人の所有物を勝手に処分したんだから新品で弁償を」と求めましたが、B社は「古いエアコンだったから新品にする必要はない。5年前の型式の中古品があるので、それを代わりに設置する」と回答。ここはAさんが「中古品を設置されても故障したら困る」と考え、新品への交換は諦め、相応の弁償代を求めました。

敷金精算トラブルの結末は…

退去から3カ月……最終的な精算内容は、Aさんが預かっている敷金からPタイル張り替え代を差し引き、余った約13,000円を「エアコン弁償代」とし、“相殺0円”になるよう調整することで決着しました。

もともと敷金は旧借主が支払ったお金でしたので、B社も承諾してくれました。

関連記事:敷金礼金ゼロの退去費用はどうなる?大家さんのリスクを回避する方法!

終わりに

今回の退去・敷金精算トラブルから学べる点は…

  • テナントの原状回復は、居住用の物件とは基本ルールが異なる
  • 退去に際しては、賃貸借契約書の原状回復の項目をよく確認すること
  • 室内のキズ・汚れが経年劣化かどうかの判断は、借主の使い方にも関係してくる
  • 契約途中で借主を変更する場合は、どんな設備があるか・どんな室内状態かを確認し、引き継ぎ事項を書面にしておいた方がいい
  • 物件の設備は貸主の所有物であり、古くなったからといって借主が無断で処分してはならない

この件に関与した私の率直な意見としては、B社は不動産業のプロなわけですから、Aさんと退去精算で揉めないよう上手に打ち合わせしてほしかったですね。

そもそも不動産取引のトラブルを防止するのが私たちの仕事なのですから。

もし退去・敷金精算でお困りの大家さんがいましたら、ご相談ください。

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