相続した空き家や敷地を売って利益を得たら所得税などを納めないといけませんが、最大3,000万円を売却益から控除できる特例があることを別の記事で取り上げました。
関連記事:相続空き家の特例(3000万円控除)は更地の売却でも適用になるの?
この特例を利用するには「相続が発生する直前まで、被相続人(亡くなった人)がその家に居住していたこと」という条件がありました。
では、亡くなる直前まで老人ホームに入所していた人の空き家売却については特例を受けられないのでしょうか?
また、相続した「空き家」が一戸建ではなく分譲マンションだった場合は特例を利用できるのでしょうか?
今回は、この2点について整理したいと思います。
被相続人が老人ホームに入所していた場合は特例を使える?
亡くなる直前は老人ホームに入っていたけど、1年前までは自宅(空き家)に住んでいた…という状況は多いのではないかと思います。
結論から言いますと、老人ホームで暮らしていた場合でも、条件を満たせば3,000万円控除の特例の対象になります。そもそもこの特例は、放置空き家を減らし不動産の有効活用を進めることが目的だからです。
以前は老人ホーム入所中に亡くなったケースは特例の対象から外れていましたが、2019年4月1日からOKになりました。
相続空き家の特例…老人ホーム入所中だった場合の要件とは?
亡くなる直前まで老人ホームにいた場合の特例の適用要件を以下にまとめます。
- 要介護認定などを受け、老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に入居していたため空き家になっていたこと
- 老人ホームに入ってから亡くなるまでの間、その人の家財などが保管されていた自宅(空き家)の売却であること
- 老人ホームに入ってから亡くなるまでの間、他人に貸したり住まわせたりしていないこと
- 1981(昭和56)年5月31日以前に建てられた住宅であること(旧耐震基準の建物)
- 相続した日から3年を経過する日を含めた年の12月31日までに売却すること
- 2023(令和5)年12月31日までの売却であること
- 売却金額が1億円以下であること
- 空き家は地震への安全性を保てる状態にしてから売却すること(耐震リフォームを施す)
- 親子や夫婦間の売買でないこと
- 売却した翌年に確定申告すること。必要書類=申告書、物件の登記事項証明書、売買契約書コピー、亡くなった人の居住用だったことを証明する確認書、耐震基準適合証明書など
上記の「確認書」は、市区町村に必要書類を提出して発行してもらいます。詳しくは、下記サイトをご覧いただいたり、最寄りの市役所担当課などにお問い合わせください。
関連サイト:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
関連サイト:被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
相続空き家の特例…マンション物件の場合はどうなる?
相続した「空き家」と言うと一戸建・一軒家をイメージしますが、対象の物件が分譲マンションだった場合はどうなるのでしょうか?
結論としては、分譲マンションは特例の対象から外れます。あくまで一戸建・一軒家の「空き家対策」を狙った特例であり、適用要件にもこのような記載があります。
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと
マンションは市街地やその周辺にあるので、借り手や買い手も付きやすいからです。一方、郊外にある一戸建は後活用が厳しい状況があり、どうしても空き家が放置されてしまうケースが増えてくるでしょう。
ちなみに、相続した空き家ではなく、所有者が現在のマイホームを売却する場合の「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除の特例」はマンションも対象になります。
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